【矯風会ステップハウス】マニュアル『申立書』

【矯風会ステップハウス】DV防止、保護命令申立(4)

申立書のつくり方 

陳述書を先に書くほうがまとめやすい。 

右ページは、保護命令が発令されたケースをもとにつくった例です。 

○ 保護命令申立てを支援するとき、被害者が初めてDV被害を振り返る経験をする場に立ち会うことがあります。 

言葉にして人に話すことで経験が整理されていきます。話を途中でさえぎったり無理に聞き出そうとしないでください。 あらかじめ提供できる時間を伝えておくとよいでしょう。 

○「たいへんな経験をくぐり抜けてきましたね」と被害者の話をよく理解し共感的に聞くことが必要です。ショックを受けた辛い体験を記憶のなかに閉じ込めることで、なんとか生き抜いてきた被害者が多いのです。 

○ 安心して話しができると実感すると、 申立てに必要な記憶がふっと甦ることもあります。 

○ 最初に陳述書をまとめます。 次に申立書を作成したほうが記入しやすいと思います。 

○ 暴力の直後で跡が身体に残っているような時には、陳述書にあまり力点を置く必要はありませんが、時間が経過しているときや複数の保護命令を申立てする時は陳述書が大切な証拠となります。 

陳述書は、あとで弁護士に相談する時や調停の時にも理解を求めるために使えます。 

○ 記入するときは鉛筆を使って書き、読み返して修正したり加えたりができるようにします。 裁判所に提出する時はコピーしたものを使います。 手元には必ず一部残しておきます。 

○ 印鑑は、完成した陳述書、申立書をコピーしたあとで押すようにしてください。 

○ 陳述書の分量の目安は3枚くらいまで。 長くても5枚以内に収めましょう。 

申立の当日、裁判官が短時間で目を通します。 事実を把握するためには、あまり長すぎないほうがいいのです。 

☆ 何年、何月何日など数字を記入しましょう。 

子どもの年齢や家族の行事、 社会的ニュースなどが記憶をたどる手がかりになります。 長い経過がある時は、簡単な年表を下書きメモとして作ると思い出しやすいです。 日時が特定できないときも多いのですが、 その場合は「◇◇頃(ころ)」と書きます。 長文にしないで、年月日に沿って箇条書きに近い形でまとめると、経過が分かりやすくなります。

暴力や、 脅迫を受けたことを中心に書きます。 

☆ 文章は、多少文法的に問題があってもかまいません。 経験した事実がご本人の言葉で表現されていればいいのです。 支援者が手を入れすぎないよう、気をつけましょう。 

例 文

陳 述 書 

名前  〇〇   生年月日  年 月 日

(暴力や脅迫などを中心に、体験してきたことを経過に沿って書きます。誰が 「~ 頃」でもいいです 何を言い何をしたか、 具体的に記入します。 言ったことは「 」に入れましょう。 )

2007年1月9日 新年に一緒の生活を始めて、この日に結婚届を出しました。 春頃、 夫の態度が変わってきて、自分の考えを押し付けるようになり、私が言うとおりにしないと急に表情がガラッと変わって口をきか なくなってしまったり、怒鳴りつけたりするようになりました。 4月上旬 私が妊娠して具合が悪くなって横になっていると「俺は仕事で疲夜しているんだ」と怒鳴り始め、洗濯物をけとばし、ティッシュの箱を私に投げつけました。夫が不機嫌になるととても険悪な雰囲気に なり怖いので、怒らせないように気を遣うようになりました。 

8月ころ 夕食の最中に私の実家の話をしていたら、突然夫が怒り出して 夜「そんなにいいなら実家に行けよ」と怒鳴りなんで怒るのか解らない」 と言ったら、私の頬を叩きました。手元のポットが倒れて熱い湯が飛び散りました。私はショックで頭が真っ白になって息が詰まかそうになり、身体が震えてきました。泣いたら夫がもっと怒り出しそうで息を詰めてこらえました。情けなくて怖くてみじめな気持でした。この頃から夫の帰宅時間が近づくと、いつも緊張して胸がどきどきするようになってきました。 

2007年10月8日 娘が生まれました。実家の母があまり体調がよくないのに手伝い 朝7時半頃に来てくれました。夫が何もしないので母はびっくりして「自分でできることは自分でやったら」と言いました。夫は母に「そんなことだから、こいつがまともな飯も作れないんだ」と怒り出し ました。夫が母にも手を挙げそうで不安になりました。 

☆ なぜ加害者が暴力をふるったのか、 その理由・原因についてはあまり詳しく記入しません。

本当の理由は加害者本人にも分からないことが多いし、 申立書に書いた理由に「そうじゃない」と相手方から反論が出されると、 暴力の有無とは関係のない争点が増えてし まって審理が長引くおそれがあります。 書くとすれば理由よりきっかけを書きます。 

例えば「理由は分かりませんが」「いつものように些細なことで怒り出して」等でも大丈夫です。 

☆ 長年被害を受け続けてきた場合は、 繰り返された出来事のうちいくつかを詳しく書いて 「こうしたことが、 何年も繰り返された」とまとめてもいいです。 

☆ 加害者の言葉はなるべくそのままを「 」でくくって書きます。 被害者にとってあまり思い だしたくない」でくくって書きます。被害者にとってあまり思い 出したくない侮辱する言葉、攻撃的な汚い言葉が多いのですが、 裁判官が状況を理解するためには効果的です。 特に脅迫的な言葉はなるべく書いておきましょう。 

☆ 携帯電話で撮った写真も証拠として使えます。 

日付が入っているもの、 被害者の顔も写っている写真は強い証拠となります。 

☆ もし、被害者が加害者に対して反撃して立ち向かったり、負傷させたことがあれば、 そのことを陳述書に書いておきます。 

裁判官が審尋のときに、加害者から初めてそうした事実を聞くと、改めてまた被害者の面接をして事実を確認するなど時間がかかる例があります。 被害者にとっては都合が悪いと思える事実であっても、最初から率直に書いている方が陳述書の内容が信頼できる ものになります。 

☆ 家から避難するときの相談窓口や、 協力者、泊まった所などを詳しく書く必要はありません。加害者が陳述書を読んで避難した先について何らかの手がかりを得ることになら ないように、注意してください。 

例文(続き)

このころから夫がセックスを求めてきてもそんな気にはなれず拒んでいました。夫は腹を立てて「誰が食わしてやってるんだ」 「嫌なら娘を置いて出て行け」と怒鳴ったりしました。 

2008年1月11日夫がいつものように細かいことで怒り出し、テレビのリモコンを夜10時頃私に投げつけました。振り払おうとした私の手の甲に当たり、腫れて赤くなり、その後青アザになりました。とてもくやしくて、携帯電話で写真に撮っておきました。 

3月20日 私は娘を実家に連れて行き、帰りが少し遅くなりました。夫は予定の夕方6時より早く帰っていて「こんな時間まで何をしていたんだ」と怒鳴り 母の悪口まで言いました。娘を寝かしつけてから、夫と言い合いになりました。私は自分の気持を抑えきれなくなって、夫の腕につかみかかりました。けれども夫の力にはとてもかなわなくて、逆に両手首を押さえられて身動きがとれなくなり、悔しくて涙が止まりませんでした。 

5月29日 夫がねちねちと嫌味なことを言い出して私は我慢ができなく 夜1時頃なか「もう嫌」「出て行く」と隣の部屋で眠っていた娘の所に行こうとしました。夫は追いかけてきて私の肩と腕をつかける張りました。私が倒れたら夫は私の太ももを蹴りました。完全に キレて「ふざけるな」と家の外にも聞こえるような大声で怒鳴りました。 

娘が恐がって泣き叫んでも夫は怒鳴り続けていました。 

6月2日 腰や足に痛みがあったので病院に行って診察を受けました。 6月5日こんど暴力を振るわれたらどんなひどいことをされるか分から 朝9時半 ないと思い、夫が仕事に行った後で、娘を連れて家を出ました。 

 

次は 申立書に記入していきます。 

各地の裁判所がそれぞれ申立書を作っています。 被害者の置かれた状況に配慮した記 入し易いものもあれば、余裕がある人にもかなり難しい様式になっているものもあります。 どこの裁判所の用紙を使って申立てしてもかまわないことになっています。 

○ この申立書は、 各地の裁判所で用意されている申立書を参考にしたものです。 

☆ 住所は、住民票上の住所か避難する前に加害者と共に生活していた場所の住所を記入すればいいことになっています。

避難後の居場所は、加害者には絶対秘密にして申立します。 

☆退去命令は 「相手方と生活の本拠を共にしているとき」という条件があるので、完全に別居状態のときは使えません 

避難中の場合や、 避難が長期化しているときも、 次のページの「現在の生活状況」の欄 に「現在も同居している」に○をします。そして「○年○月○日から一時避難している」に 記入します。 

☆ 裁判官は、 接近禁止命令より退去命令の発令を条件を厳しくする傾向にあります。 しかし、DV法の上では接近禁止と同じ要件で発令されることになっています。 

退去命令は残した荷物を引き取るためだけに発令されるわけではありません。 被害者名義や被害者の親名義の家に加害者が居座っている例もあります。 

被害者が引越しできない事情があり、加害者は入居施設を利用している例では加害者 の危険度が高いことが考慮されて繰り返し発令されました。 

在宅で被害者が高齢の親の介護をしていて転居が困難であるなどの事情も考慮される 可能性があります。 

☆ 電話等禁止命令は、 被害者本人の接近禁止命令と同時に申立てするか、 既に接近禁止命令が発令されているときに申立てが可能です。 

この命令については、 なぜ必要かを別に主張しないでも接近禁止命令が発令される同じ要件で発令されることになっています。 

収入印紙千円  保護命令申立書申立の直前に貼りましよう 

○年○月○日  ※押印しない 

〇〇 地方裁判所 御中 

申立人 

○○ 

○○ 

当事者表示 

申立人 

住所    ○○○ 

★ 避難しているため現在の居所を相手方に知られたくない場合は、 直前の住所を記入します 

相手方 

住所 ○○○ 

(○)退去命令 

保護命令 (について裁判求めます 

命令の効力が生じた日から起算して2ヶ月間、申立人と共に生活の本拠としている住居から退去せよ。 相手方はこの期間中、 前記の住居付近をはいかいしてはならない。 

(○) 接近禁止命令 

命令の効力が生じた日から起算して6ヶ月間、申立人の住居 (相手方と共に生活の本拠としている住 居を除く。 以下おなじ) その他の場所で申立人の身辺につきまとい、 申立人の住居、 勤務先、 その他の 通常居る場所の付近をはいかいしてはならない。 

(○)電話等禁止命令 

申立人に対して接近禁止命令の効力が生じた日から起算して6ヶ月間、次の行為をしてはならない。 

1 面会を要求する 

2 行動を監視していると思わせるような事を告げる、 またこのことを申立人が知る状態にする 

3 著しく粗野、または乱暴な言動をする 

4 無言電話、または緊急やむをえない場合ではないのに電話、ファックス、メールを連続して送る 

5 緊急やむを得ない場合以外に、 午後10時から午前6時の間に電話、ファックス、メールを送る 

6 汚物、動物の死体など著しい不快、嫌悪を感じさせる物を送る、 またこのことを申立人が知る状態にする 

7申立人の名誉を傷つけることを告げる、 または名誉を傷つけていると申立人が知る状態にする 

8 性的羞恥心を害することを告げる、 または性的羞恥心を害していることを申立人が知る状態にする。 羞恥心を害する文書、 図画その他の物を送る、または申立人がそれを知る状態にする。 

☆ 子への接近禁止命令と親族等への接近禁止命令は、被害者本人の接近禁止命令と同時に申立てするか、 既に接近禁止命令が発令されているときに申立てが可能です。 一緒に避難中の成人した子については、 親族等への接近禁止命令を使います。

☆ 電話等禁止命令とは違って、それぞれの発令を必要とする理由を申立書で主張するこ とになります。 

☆ 一時避難しているときや、一時避難状態が長期化しているときは 「現在の生活状況」の 欄の「現在も同居している」に○をして、「○年○月○日から一時避難している」という項目に記入します。 

☆ 事実婚の関係は、証明が必要となります。 証拠として次のようなものが考えられます。 

例えば 住民票 

二人に来た結婚式などの招待状や、知人へ事実婚を伝えた手紙 

親族の行事 (葬儀など) で二人が写っている集合写真 

家計が一緒に営まれていたことを示す光熱水費の領収書・銀行口座など 

加害者が被害者の苗字を使って作っていたレンタルビデオのカードが、事実婚の証明に役立ったことがありました。 

☆再度の保護命令の申立には、右の2に記入。 前回に申立した内容 (暴力被害の内容な ど)をそのまま使えます。 そして、 それに加えて保護命令発令後の相手方の言動やその 他の保護命令発令を必要とする、 現時点での理由 (この申立書では8の項目)を申立 書で主張します。 

(○)子への接近禁止命令 

命令の効力が生じた日から起算して6ヶ月間、子の住居 (相手方とともに生活の本拠としている住居を 

除く。以下同じ) 就学する学校その他の場所で、子の身辺につきまとい、または子の住居、 就学する学 校、 その他の通常居る場所の付近をはいかいしてはならない。 

(○) 親族などへの接近禁止命令 

命令の効力が生じた日から起算して6ヶ月間、 親族などの住居(相手方とともに生活の本拠としている住居を除く。以下同じ) その他の場所で、 親族などの身辺につきまとい、 親族などの住居、 勤務先、 その他の通常居る場所の付近を徘徊してはならない。 

立て理由 

私と相手方の関係 

1 相手方と同居を始めた日は ○月○日ころです。 

(○)結婚した日は (婚姻届を出した日) 年○月○日です。 (  )婚姻届は出していませんが  年 日ころから 

2(○)私は相手方と現在も同居しています。 

内縁関係となっています。 

★ 避難中で、相手方に現在の居所を知られたくないときは上の( に○をつけて下に記入します。 

 年○月○日から、自宅以外の場所に避難しています。 

私は (○) 住民票を移していません。 (  ) 住民票を移しています。 

(  )住民票の閲覧制限をしています。 (  )私は  年  月  日から別居しています。 

★ 別居の場合は退去命令の申立はできません 

(  )住民票を移していません。 (  )住民票を移しました。 ( )住民票の閲覧制限をしています。 

3 ( 私は相手方と  年  月  日に離婚(内縁関係を解消) しました。 

すでに発令された保護命令は、次のとおりです。 口にレを入れます。 

 

発令年月日  年  月   日 

事件番号    裁判所  平成  年(配チ) 第  号 

□退去 口 接近禁止 

□電話等禁止

□子への接近禁止 

□親族などへの接近禁止 

発令年月日  年 月  日

 

事件番号   裁判所   平成  年(配チ)第   号 

□退去

口接近禁止 

口電話等禁止

□子への接近禁止 

□親族などへの接近禁止